たわむれに 数を学びて そのあまり かたきに 泣きて 三歩あゆまず
山下倫範
とりあえず,初等整数論入門と謳ってますが,主題はオイラー関数です.いまから,55年前の高2の時に気づいたオイラー関数の(日本ではあまり知られていない)或る性質とその周辺を紹介することを目的としています.以下,ランダムに書き留めてゆきます・・・.誤植,誤り等がありましたら,yamasita[at]ris.ac.jp までお願いいたします.2025.9.20
数
$$
1,~2,~3,~4,~5,...,~99,~100,~101,~...
$$
を自然数(natural number)といい,この自然数の集合を${\mathbf N}$で表します.ここで,$-{\mathbf N}=\{~-x~|~x\in{\mathbf N}~\}$とおき,$-{\mathbf N}\cup\{~0~\}\cup{\mathbf N}$ すなわち
$$
...,~-10,~-9,...,~-5,~-4,~-3,~-2,~-1,~0,~1,~2,~3,~4,~5,...,~99,~100,~101,~...
$$
を整数(integer)といい,この整数の集合を${\mathbf Z}$で表します.この${\mathbf Z}$を用いて,自然数の集合${\mathbf N}$を${\mathbf Z}^{+}=\{~x\in {\mathbf Z}~|~x>0~\}$で表す場合もあります.同様に,負の整数の集合を${\mathbf Z}^{-}=\{~x\in {\mathbf Z}~|~x<0~\}$と表す場合もあります.
この${\mathbf Z}$という表記は,数のドイツ語表記"Zahlen"および整数のドイツ語表記"GanzeZahl"の"Z"から用いられるようになったと言われています.
整数 $a,~b,~c$ について,
$$
a=bc
$$
と表されるとき,$a$は$b$で割り切れる(整除する)もしくは$a$は$c$で割り切れる(整除する)といい,$b$は$a$の約数(divisor)であるもしくは$b$は$a$の約数という.この関係を$|$という記号を用いて,それぞれ$b|a$,$c|a$と表記し,このとき$a$は$b$の倍数(multiple)もしくは$a$は$c$の倍数ともいいます.この関係の否定を$b\not\mid a$,$c\not\mid a$のように表します.
この記号$|$は次の性質を持っています.
$n\in {\mathbf N}$が素数であれば,すでに成立しているので$n$が合成数であるとします.つまり,$n$は1と$n$以外の約数をもちますが,この中で最小の数を$m$とします.すると$m$は素数$p_{1}=m$であることがわかります.よって,$n=p_{1}n_{1}$と分解されます.$n_{1}$が素数であれば証明は終了し,$n_{1}$が合成数であれば,さきほどの$n$に対する 議論を$n_{1}$に適用して,ある有限回($s$回)で終了し, $$ n=p_{1}p_{2}\cdots p_{s} $$ と,有限個の素数の積で表すことができます.
q.e.d.
例えば, $$ \begin{align*} 6 &=2\cdot 3, \\ 66 &=2\cdot 3\cdot 11 \\ 666 &=2\cdot 3\cdot 3\cdot 37=2\cdot 3^2\cdot 37 \\ 6666 &=2\cdot 3\cdot 11\cdot 101 \\ 66666 &=2\cdot 3\cdot 41\cdot 271 \\ 666666 &=2\cdot 3\cdot 3\cdot 7 \cdot 11\cdot 13\cdot 37=2\cdot 3^2\cdot 7 \cdot 11\cdot 13\cdot 37 \\ 6666666 &=2\cdot 3 \cdot 239 \cdot 4649 \end{align*} $$ $n$を標準形と言われる少しキレイな形で表記すると$n$の素数(の積)による分解の標準形$\displaystyle\prod_{i=1}^{s}p_{i}^{e_{i}}$を$n$の<素因数分解(prime factorization)といいます. これについて,さらに重要な
を確認してみましょう.色々な証明などが知られていますが,方針は,$n$が $$ n=\displaystyle\prod_{i=1}^{s}p_{i}^{e_{i}}=\prod_{i'=1}^{t}q_{i'}^{e'_{i'}} $$ と2通りの表し方(標準形)が与えられたとして,$s\leqq t$を出発点としてゆけば,容易に解決できます.
数論的関数(arithmetic function)とは正整数に対して複素数を対応させる関数のことをいいます.
数論的関数 $f(n),~g(n)$ の間に合成積(convolution)を定義してみましょう.この合成積はディリクレ積ともいわれます.$$ \begin{align*} (f*g)(n)=\sum_{d|n}f(d)g\left(\dfrac{n}{d}\right) \end{align*} $$ このとき,次のことがわかります.$h(n)$も数論的関数としておきます.
これは,単位元の分解を用いて $f=\rho*g \Longleftrightarrow \mu*f=\mu*(\rho*g)=(\mu*\rho)*g=e*g=g$ の変形から理解できます.
もう少しわかりやすく・・・.
$$
\begin{align*}
f(n)=\sum_{d|n}g(d)
\end{align*}
$$
は$f=\rho*g$を表しているので,合成積で考えると
$$
\begin{align*}
f&=\rho*g \\
\mu*f&=\mu*(\rho*g)=(\mu*\rho)*g=e*g=g
\end{align*}
$$
と変形され,$g=\mu*f$,すなわち$g(n)=(\mu*f)(n)$を得,
$$
\begin{align*}
g(n)=(\mu*f)(n)=\sum_{d|n}f(d)
\end{align*}
$$
閑話休題:合成積にもいろいろある
数論的関数にこだわらず,たとえば,非負整数上の数列 $f_{n},~g_{n}$ に拡大すれば次のような合成積もあります.
$$
\begin{align*}
f_{n}\ast g_{n}=(f\ast g)_{n}=\sum_{k=0}^{n}{n \choose k}f_{n-k}g_{k}
\end{align*}
$$
これらにも 反転公式が生まれます.
そのとき,上で扱った$\rho,~\mu$は,どのような数列になるでしょうか.
いくつかの数論的関数同志の合成積を紹介しておきましょう.
ディリクレ級数を紹介して,合成積との関係を見てみましょう.
ディリクレ級数とは,数論的関数$f(n)$と複素数$s$を用いて,次のように定義される級数です.形式的ディリクレ級数という場合もありますが,それは級数の収束性を問題にしていないという意味で扱われます.
$$
\begin{align*}
\sum_{k=1}^{\infty}\dfrac{f(n)}{n^s}
\end{align*}
$$
上のディリクレ級数を${\mathcal D}_{f}$と書くことにしておきます.すると,${\mathcal D}_{f}$と${\mathcal D}_{g}$を乗じて$\displaystyle\dfrac{1}{n^s}$の項でまとめてゆくと
$$
\begin{align*}
&\left(\sum_{k=1}^{\infty}\dfrac{f(n)}{n^s}\right)\left(\sum_{k=1}^{\infty}\dfrac{g(n)}{n^s}\right) \\
&=\dfrac{f(1)g(1)}{1^s}+\dfrac{f(2)g(1)+f(1)g(2)}{2^s}+\dfrac{f(3)g(1)+f(1)g(3)}{3^s} \\
&\quad+\dfrac{f(1)g(4)+f(2)g(2)+f(4)g(1)}{4^s}+\dfrac{f(5)g(1)+f(1)g(5)}{5^s} \\
&\quad+\dfrac{f(1)g(6)+f(2)g(3)+f(3)g(2)+f(6)g(1)}{6^s}+\dfrac{f(7)g(1)+f(1)g(7)}{7^s} \\
&\quad+\dfrac{f(1)g(8)+f(2)g(4)+f(4)g(2)+f(8)g(1)}{8^s}+\cdots \\
&=\sum_{k=1}^{\infty}\dfrac{(f*g)(n)}{n^s}
\end{align*}
$$
このことから
$$
\begin{align*}
{\mathcal D}_{f}{\mathcal D}_{g}={\mathcal D}_{f*g}
\end{align*}
$$
であることがわかります.
ここで,先に紹介した典型的な数論的関数のディリクレ級数を求めてみましょう.
整数$a,~b,~n(\ne 0)$について,$a-b$が$n$の倍数であるとき,すなわち,ある整数$k$を用いて$a-b=kn$と表わせるとき
$$
\begin{align*}
a\equiv b \pmod{n}
\end{align*}
$$
と表記し,$a$と$b$は法$n$で合同であるといい,$\equiv$ を合同記号といいます.
合同記号は等号と同じように次の性質を有しています.
中国の剰余定理(Chinese Remainder Theorem)は雉兎同籠(鶴亀算)の出ている孫子算経(下巻)に出ている「3で割ると2余り,5で割ると3余り,7で割ると2余る数は何か」という問題と解答に由来していますが,この呼称はEarliest Known Uses of Some of the Words of Mathematics(C)によれば,ディクソン(L. E. Dickson)の"Introduction to the theory of numbers", The university of Chicago Press, 1929",p.11において出現したとのことです.
証明してみましょう. このオイラー関数は,1760年にオイラーがフェルマーの小定理を素数でない場合に拡張することを目的に.自然数$n$について,$n$以下で$n$と互いに素である数の個数と定義したものです。
一方で,行列(matrix)や3次方程式以上の判別式(discriminant)という用語を産みだし,米国初の数学雑誌・American Journal of Mathematicsを創刊したことでも知られるシルヴェスターが呼称したオイラーのトーシェント(totient)関数とも呼ばれることもあります。これは1879年にシルヴェスター(J. J. Sylvester, 1814-1897)が自然数$n$についての"totitive"($n$以下でその数と互いに素な数)の概念を導入(Sylvester, On Certain Ternary Cubic-Form Equations, American Journal of Math., Dec., 1879, Vol.2, No.4 (Dec.,1879), pp. 357-393; p.378に記述)し,この個数を $n$ の "totient" と呼び $\varphi(n)$ を $\tau(n)$ として利用したことから生まれた呼称となります(Sylvester, On Certain Ternary Cubic-Form Equations, American Journal of Math., Dec., 1879, Vol.2, No.4 (Dec.,1879), pp. 357-393; p.361
に記述,L.E. Dickson, History of the THEORY OF NUMBERS Vol.1, p.124 (1919). でも追述 ).初等整数論を少しでも学んだことのある人にはお馴染みかもしれません。
1760年当時,オイラーは自然数$n$について,$n$以下で$n$と互いに素である個数を$\pi\ n$と表記し,現在のオイラー関数といわれるものを定義しました。このときは${\mathbf\pi}\ 1=0$としていました。(L. Euler, Leonhard, Speculationes circa quasdam insignes proprietates numerorum, (1784). Euler Archive - All Works. 564. ; L. Euler, Acta Ac. Petrop.,4 II (or 8), vol.1780 (1775), 18; Comm. Arith., 2, 127-133.)
因みに,藤原松三郎(1881-1946)によれば,江戸時代の和算家・久留島義太(くるしま よしひろ, ?-1757)がオイラーよりも前に発見していたといわれています.(藤原松三郎,(川原秀城解説),日本数学史要,(1952年宝文館発刊,復刻版),勉誠出版,2007)
$$ \begin{align*} \varphi(n)=\left\{ \begin{array}{ll} \displaystyle \sum_{\substack{1\leqq k\leqq n\\ (n,k)=1}}1 & (n>1) \\ \qquad 1 & (n=1) \end{array} \right. \end{align*} $$
・・・・・
オイラー関数 $\varphi$ では$n>1$について$\varphi(n)\lt n$が成り立っていることから,
$$
\begin{align*}
\varphi(\varphi(n)),~\varphi(\varphi(\varphi(n))),\cdots ,~\varphi(\varphi(\cdots (\varphi(n))\cdots ))
\end{align*}
$$
とオイラー関数を繰り返して作用させてゆくと,いつかは$1$にたどり着くことがわかります.
つまり,$\varphi^{k}(n)=\varphi(\varphi^{k-1}(n)),(k\geqq 2),\quad \varphi^{1}(n)=\varphi(n)$と書くことにすれば,どのような$n$についても,ある($n$に依存する)$k=k(n)$で初めて$\varphi^{k}(n)=1$となることがわかります.
$$
\begin{align*}
\varphi(2)&=1 \\
\varphi(3)&=2,~\varphi(2)=1 \qquad \varphi(\varphi(3))=\varphi^2(3)=1 \\
\varphi(4)&=2,~\varphi(2)=1 \qquad \varphi(\varphi(4))=\varphi^2(4)=1 \\
\varphi(5)&=4,~\varphi(4)=2,~\varphi(2)=1 \qquad \varphi(\varphi(\varphi(5)))=\varphi^3(5)=1 \\
\varphi(6)&=2,~\varphi(2)=1 \qquad \varphi(\varphi(6))=\varphi^2(6)=1 \\
&\cdots \cdots \\
\varphi(100)&=40,~\varphi(40)=16,~\varphi(16)=8,~...,~\varphi^6(100)=1 \\
&\cdots \cdots
\end{align*}
$$
という具合です.
では,何回で$1$にたどり着くのか,その回数$k(n)$を計算してみましょう.
山下は,大学入学時から(当時,秋月-永田の"近代代数学"で導来正規環の学習をしていて,"導来"という言葉を気に入り)勝手にオイラー関数の導来対数関数と呼称していました.
シャピロは1950年に自身の結果をさらに拡張して(H. Shapiro, On the iterates of certain class of arithmetic functions, Comm. Pure Applied Mth. ${\bf 3}$ (1950), 259-272),$f,\ A$を自然数値をもつ数論的関数で,$f(p_{i})$を素数$p_{i}$については$1\leqq f(p_{i})< p_{i}$,$A$は奇素数$p_{i}$については$A(2)=2,\ 2\lt A(p_{i})\leqq p_{i}$として
$$
\begin{align*}
f(n)=\prod_{i=1}^{r}f(p_{i})\left( A(p_{i} \right)^{e_{i}-1}
\end{align*}
$$
とし,$f(n)\lt n$ であることから,$n\gt 2$について,ある$k=k_{f}(n)$について,
$$
f^{k}(n)=2
$$
であることから,$k_f(1)=k_f(2)=0$として
$$
c_{f}(n)=\left\{
\begin{array}{ll}
k_f(n) & n:\mbox{odd} \\
k_f(m)+1 & n:\mbox{even}
\end{array}
\right.
$$
を定義し,先の$C(n)$と同様の関係式を有することを示しました.
一方,宮田-山下は別視点で次のことを示しました.(2004.9 日本数学会秋季総合分科会・応用数学分科会)
各素数$p$について,$f$ を$1\leq f(p)\lt p$であるような関数とし,$\varphi_{f}$を
$$
\begin{align*}
\varphi_{f}(n)=n\prod_{i=1}^{s}\dfrac{f(p_i)}{p_i} \qquad (n=\prod_{i=1}^{s}p_{i}^{e_{i}})
\end{align*}
$$
と定め,
$$
\begin{align*}
L_{\varphi_{f}}(n)=\left\{
\begin{array}{ll}
0 & n=1 \\
L(\varphi_{f}(n))+\#\left|\{ p\in f^{-1}(1):p|n \}\right| & n\gt 1
\end{array}
\right.
\end{align*}
$$
と定義すれば
$$
\begin{align*}
L_{\varphi_{f}}(xy)=L_{\varphi_{f}}(x)+L_{\varphi_{f}}(y)
\end{align*}
$$
が導かれます.
証明の方針は,$x=\displaystyle\prod_{i=1}^{s}p_{i}^{e_{i}}$ の帰納法によります.$x$ 未満では成立しているものとしておきます.
$$
L_{\varphi_{f}}(x)=e_{1}L_{\varphi_{f}}(p_{1})+e_{2}L_{\varphi_{f}}(p_{2})+\cdots+e_{s}L_{\varphi_{f}}(p_{s})=\sum_{i=1}^{s}e_{i}L_{\varphi_{f}}(p_{i})
$$
を示せば十分です.
$\alpha=\#|\{ p\in f^{-1}(1) : p|x \}$ として,素数 $p$ に対して,$f(p)=1$ なら $L_{\varphi_{f}}(f(p))=0$,そうでなければ $L_{\varphi_{f}}(f(p))=L_{\varphi_{f}}(p)$ であることに注意して
$$
\begin{align*}
L_{\varphi_{f}}(x)&=L_{\varphi_{f}}(\varphi(x))+\alpha \\
&=\sum_{i=1}^{s}(e_{i}-1)L_{\varphi_{f}}(p_{i})+\sum_{i=1}^{s}L_{\varphi_{f}}(f(p_{i}))+\alpha \\
&=\sum_{i=1}^{s}(e_{i}-1)L_{\varphi_{f}}(p_{i})+\sum_{i=1}^{s}L_{\varphi_{f}}(p_{i})-\alpha+\alpha \\
&=\sum_{i=1}^{s}e_{i}L_{\varphi_{f}}(p_{i})
\end{align*}
$$
ここでの $\alpha=0,1$ が $L(x)$ での $x$ の扱い,奇偶の扱いに対応していて,$L(x)$ に関する対数関係式の別証を与えています.
$1\lt n=\displaystyle\prod_{i=1}^{r}p_{i}^{e_{i}}$としておきます.
$M(n)=\{~x\in \mathbb{N}~|~L(x)=n~\}$,$m(n)=|M(n)|,~m(0)=1$
とし,この$m(n)$を求めよう.$x=\displaystyle\prod p_i^{e_i}$の素因数分解について,$L(x)=\sum e_iL(p_i)$であることから,$m(n)$を求めることは,$L(x)=n$の$n$を$L(p_i)$を基にした分割数問題となります.したがって,
$$
M_p(n)=\{~x:\mbox{prime}~|~L(x)=n~\},\qquad c_n=\#|M_p(n)|
$$
としたとき,Eulerによる無限和と無限積の恒等式を真似れば次の恒等式が得られます.
$$
\begin{align*}
\sum_{k=0}^{\infty}m(k)x^k &=
\prod_{p}\frac{1}{1-x^{L(p)}}\\
&= \prod_{k=1}^{\infty} \prod_{i=1}^{c_k}\frac{1}{1-x^k}\\
&= \prod_{k=1}^{\infty} \frac{1}{(1-x^k)^{c_k}}
\end{align*}
$$
$c_n$が具体的に求められれば,$m(n)$が求められます.
$m(n)$までを求めたければ
$$
\prod_{k=1}^{n}\displaystyle\frac{1}{~(1-x^{k})^{c_k}}~
$$
の計算でよいですね.
OEIS(A064674):Number of primes q such that phiter(q)=n where phiter(n)=A064415(n), OEIS(A064416):Number of integers q such that phiter(q)=n where phiter(n) = A064415(n)では $n\leqq 16$ までなので,$n \leqq 23$ での $c_n,~m_n$ の計算結果(by Java)を以下に示しておきましょう.
$c_n$ $m(n)$ について
$$
\begin{array}{ccc}
n & c_n & m(n) \\
1 & 2 & 2 \\
2 & 2 & 5\\
3 & 3 & 11\\
4 & 6 & 26\\
5 & 12 & 59\\
6 & 23 & 137\\
7 & 46 & 312\\
8 & 94 & 719\\
9 & 198 & 1651\\
10 & 424 & 3816\\
11 & 854 & 8757\\
12 & 1859 & 20202\\
13 & 3884 & 46440\\
14 & 8362 & 106957\\
15 & 17837 & 245989\\
16 & 38977 & 566561\\
17 & 84188 & 1303968\\
18 & 183167 & 3002247\\
19 & 398685 & 6910122 \\
20 & 874078 & 15909143 \\
21 & 1914563 & 36621627 \\
22 & 4208672 & 84308428 \\
23 & 9268875 & 194080801
\end{array}
$$
以下,$M_p(9)$までの素数リストを示しておきましょう.
$M_p(1)=\{~2,~3~\}$
$M_p(2)=\{~5,~7~\}$
$M_p(3)=\{~11,~13,~19~\}$
$M_p(4)=\{~17,~23,29,~31,~37,~43~\}$
$M_p(5)=\{~41,~47,~53,~59,~61,~67,~71,~73,~79,~109,~127,163~\}$
$M_p(6)=\{~83,89,97,101,103,107,113,131,139,149,151,157,173,181,191,197,199,211,223,229,271,379,487\}$
$M_p(7)=\{137,167,179,193,227,233,239,241,251,263,269,277,281,283,293,307,311,313,317,331,337,347,$
$\qquad\qquad 349,367,373,383,397,419,421,431,433,439,457,463,491,509,523,541,547,571,631,653,757,811,$
$\qquad\qquad 883,1459 \}$
$M_p(8)=\{257,353,359,389,401,409,443,449,461,467,479,499,503,521,557,563,569,577,587,593,599,601,$
$\qquad\qquad 607,613,617,619,643,647,659,661,673,677,683,691,701,709,727,733,739,743,751,761,787,797,$
$\qquad\qquad 827,829,839,859,859,863,877,907,911,919,937,947,967,983,991,1009,1019,1033,1039,1051,1063,$
$\qquad\qquad 1087,1091,1093,1103,1117,1171,1279,1291,1297,1303,1307,1373,1423,1471,1483,1549,1567,1597,$
$\qquad \qquad 1621,1627,1783,1949,1999,2053,2269,2287,2647,2917,3079~\}$
$M_p(9)=\{~641,719,769,773,809,821,823,857,881,887,929,941,953,971,977,997,1013,1021,1031,1049,1061,$
$\qquad \qquad 1069,1109,1123,1129,1151,1153,1163,1181,1187,1193,1201,1213,1217,1223,1229,1231,1237,1249,$
$\qquad \qquad 1259,1277,1289,1301,1319,1321,1327,1367,1381,1399,1427,1429,1447,1451,1453,1481,1487,1489,$
$\qquad \qquad 1493,1499,1511,1523,1531,1559,1671,1579,1583,1597,1609,1613,1657,1663,1667,1669,1693,1699,$
$\qquad \qquad 1709,1721,1723,1733,1741,1747,1753,1759,1777,1787,1789,1801,1811,1823,1831,1847,1861,1867,$
$\qquad \qquad 1873,1877,1879,1901,1933,1851,1979,1987,2003,2011,2017,2019,2039,2083,2087,2089,2111,2129,$
$\qquad \qquad 2131,2143,2161,2179,2203,2207,2213,2221,2237,2239,2243,2251,2281,2293,2311,2341,2357,2371,$
$\qquad \qquad 2377,2383,2389,2399,2423,2437,2503,2521,2539,2549,2557,2591,2593,2609,2617,2677,2683,2699,$
$\qquad \qquad 2711,2719,2731,2749,2791,2843,2851,2887,2927,2971,3011,3049,3067,3109,3187,3253,3259,3271,$
$\qquad \qquad 3307,3319,3331,3511,3529,3533,3547,3557,3583,3613,3727,3823,3889,3907,3919,3943,4051,4159,$
$\qquad \qquad 4219,4447,4549,4663,4789,4861,4871,4903,5023,5347,5419,5869,6823,6967,8803~\}$
また,$M_p(n)$の要素$q$については
$$
\max_{q\in M_p(n)} q \leqq 2\cdot3^{n-1}+1$$
が成立しているが,この不等式での等号は外せません.$2\cdot 3^{n-1}+1$が素数になる場合があるからです.ただし,$n\longrightarrow \infty$では,(実験では)素数になる確率は下がってゆくような振舞いを見せています.
因みに$n<5000$の範囲で$y(n)=2\cdot 3^{n-1}+1$が素数となるのは$n=1,2,3,5,6,7,10,17,18,31,55,58,61,66,133,181,321, 697, 783, 823, 898, 1253, 1455, 4218~$の24個だけです(by Maple \& Python)
.
$$
\begin{align}
y(181) &= ~1523546~9609173278~4678579455 \notag \\
& ~4412311235~0084960280~4790393448 \notag \\
& ~0031314899 ~1427468606~6076039203 \notag
\end{align}
$$
この型の数については,既に,OIESでは100万ほどまで調べられています.(A003306:Numbers $n$ such that $2*3^n+1$ is prime)
そこでは,
$0, 1, 2, 4, 5, 6, 9, 16, 17, 30, 54, 57, 60, 65, 132, 180, 320,696, 782, 822,$
$897, 1252, 1454, 4217, 5480, 6225, 7842,12096, 13782, 17720,$
$43956, 64822, 82780, 105106, 152529,165896, 191814, 529680, 1074726, 1086112, 1175232$
の41個と報告されています.ここでの記法では,これらの数に$+1$したものとなります.無限に存在するでしょうが,分布のorderについては,未解明です.
$\displaystyle\sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{~\varphi(n)^s~}$なる関数を考えてみ ましょう.
具体的に計算してみると,この級数は
$$
\begin{align}
\frac{1}{1^s}&+\frac{1}{1^s}+\frac{1}{2^s}+\frac{1}{2^s}+\frac{1}{4^s}+\frac{1}{2^s}+\frac{1}{6^s}+\frac{1}{4^s}+\frac{1}{6^s} \notag \\
& +\frac{1}{4^s} +\frac{1}{10^s}+\frac{1}{4^s}+\cdots \notag \\
&=\sum_{n=1}^{\infty}\frac{h(n)}{n^s} \notag
\end{align}
$$
であり,ディリクレ級数の特別な場合(?)となります.しかも,この係数$h(n)$は次のような数となっています.
$$
H(n)=\{~ x~|~\varphi(x)=n ~\},\qquad h(n)=\#|H(n)|
$$
因みに,$n\geqq 3$なる奇数$n$については$h(n)=0$は自明ですが,$p\gt 3$なる素数$p$について,$2p+1$が素数でない場合にも$h(2p)=0$です.
いま,$\varphi$で考えましたたが,この$\varphi$を数論的関数$g(n)$(ただし,$g(n)\geqq 1$かつ$H(n)=\{~ x~|~g(x)=n ~\},\qquad h(n)=|H(n)|\lt \infty$)で置き換えてもディリクレ級数の特別な場合となります.
また$L$についてのディリクレ級数
$$
\sum_{n=1}^{\infty}\frac{~L(n)~}{n^s}
$$
は,$L(x)$に関する評価不等式から,実数$s$で
$$
\sum_{n=1}^{\infty}\frac{~L(n)~}{n^s} \lt \zeta'(s)
$$
.
オイラー関数の一つの拡張として,ジョルダンの標準形やJordan-Hölder-Schreierの定理等で知られるジョルダン(Camille Jordan)の仕事に因んで命名されているジョルダンのトーシェント関数(Jordan's totient function)があります.ジョルダンの仕事とは,"Mémoire sur les équations différentielles linéaires à intégrale algéebrique"(J. Reine Angew. Math. 84 (1878), 89–215)の中で
$$
\#|{\rm GL}(n,\mathbf Z/n\mathbf Z)|=n^{\frac{m(m-1)}{2}}\prod_{k=1}^{m}J_{k}(n)
$$
を示したことによります.
$n$以下の自然数から$m$個を重複を許して選び,その$m$個と$n$の最大公約数が$(k,n)=1$ となるようなもの$k$の総数を$J_{m}(n)$で表していることになります.
$$
\begin{align*}
J_{k}(n)=n^{k}\prod_{p|n}\left( 1-\frac{1}{~p^k~}\right)
\end{align*}
$$
(ディリクレ)合成積の表現をすれば
$$
\begin{align*}
J_{k}=\mu\ast \iota_{k}
\end{align*}
$$